忍者ブログ
キッカーの不定期更新日記 (四季来々トップへはカレンダー下のリンクから戻れます)
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

それから優莉亜は、陽介と一緒に赤い砂を探した。
探すといくらかは見つかったが、それらは陽介を満足させなかった。
優莉亜が見つけて渡すたびに、陽介は首を横に振った。
日が暮れて、優莉亜は砂浜を後にした。
次の日も、優莉亜は砂浜に来た。
その次の日も、優莉亜は砂浜に来た。
そうして優莉亜が来るときはいつも、陽介はもう砂浜にいた。
二人はそろって赤い砂を探した。
そして話をして、笑った。

あるとき、陽介は優莉亜に尋ねた。

「優莉亜さんは、この砂浜と風景をどう思いますか?」

優莉亜は辺りをながめた。
それから、ゆっくりと答えた。

「素敵だと思います。
癒されるというか、すごく心を惹きつけて。
なんていうか、このまま景色の中に溶け込めそうな」

陽介は微笑んだ。
砂はまだ見つからないまま、今日も日は暮れた。

拍手[0回]

PR
彼女の高揚感が、するりと肩透かしを食らってしぼんだ。
青年は彼女の様子を見て謝った。

「すみません、わざわざ手伝っていただいたのに」

「あ、いえそんな。
私が勝手に手伝っただけですから」

彼女の顔が赤くなった。
青年はどうしようか迷うそぶりを見せた。
互いに気まずくて沈黙した。
少しして、彼女の方から喋った。

「あの、もし邪魔ならここ出ますけど」

「あ、いえそんな邪魔なんて」

青年は手を横に振って答えた。

「全然、そんなことないですよ。
むしろ、独りぼっちで寂しいなって思ってたところですから」

青年はそう言って視線を外した。
もの悲しげな横顔だった。
彼女はその横顔をながめていた。
それから、ややあって口を開いた。

「あの、もしよろしければ、赤い砂を探すの、しばらく手伝ってもいいですか」

青年は彼女を見上げた。
それからおずおずと答えた。

「ええ、そうしてくれるならありがたいです。
あ、でも」

青年はとまどうそぶりを見せて、それから言った。

「名前を」

彼女は「あ」と小さくつぶやいて、それから名乗った。

「安藤優莉亜です」

青年は微笑んで言った。

「瀬戸陽介です」

雲が途切れて、光の筋がこぼれ始めた。

拍手[0回]

青年は顔を上げた。
彼の瞳が、まぶしそうに彼女をとらえた。
彼女は続けた。

「あの、何か探してるんですか」

青年は彼女を見つめた。
それから視線を指先に戻して、静かに言った。

「赤い砂を、探しているんです」

「赤い砂?」

オウム返しに彼女は尋ねた。
青年はうなずいて答えた。

「そうです。
赤い砂です」

青年はそれからまた、作業に没頭した。
彼女はその様子をしばらくながめていた。
そうしてから彼女も、見様見まねで砂を探った。
砂にかがんで指先にすくった。
それから少しずつ、見つめながら流した。
流れる感触は心地よかった。

不意に、他とは違う色の砂がひとつぶ、指の間を通り抜けた。
彼女は慌ててそれを拾った。
赤い砂だった。
彼女は高揚した声で青年に呼びかけた。

「これ。
赤い砂。
ありましたよ」

青年は彼女に近づいて、その手から砂を受け取った。
それから手の平で転がして、砂を観察した。ややあって、青年は悲しそうに首を振った。

「残念ですが、これは私の探している砂ではありません」

拍手[0回]

曇り空に反響して、波音が柔らかく耳に届いた。
そろそろ暑さのゆるみ始めた時候に、天気と場所があいまってさらに涼しかった。
彼女は今、この砂浜にいた。
住宅地にほど近いちっぽけな砂浜で、彼女は風に髪を預けていた。
用があって来たわけではなかった。
ただなぜか、この場所が彼女を魅了して、そして引き込んだ。

彼女は目を閉じた。
この砂浜を、耳と肌で感じた。
しばらくそうしてから、目を開けた。
そうすると、不意に彼女の視界に青年の姿が映った。

いつからそこにいたのか、彼女はまったく気づかなかった。
青年は砂にかがんで、何かを探している様子だった。
彼女に気づいている様子はなかった。
彼の指先は砂をすくって、さらさらと流した。
黒い髪はしっとりとして、その下の目はただ指先の砂を見つめていた。
きれいだった。
きれいで、そしてどこかはかなげだった。
まるで彼自身が、景色の一部のようだった。意識せず、彼女は声をかけていた。

「あの」

拍手[0回]

少女は急にしぼんで、元の形に戻った。
その目には、涙が流れていた。
青年は笑って言った。

「相当下流まで流されてたぜ。
こんなとこで地縛霊やってても見つかりっこないわけだ」

少女はぬいぐるみを受け取った。
少女は尋ねた。

「あなた、名前は」

青年はしばらく少女の顔をながめてから答えた。

「高峰月彦」

少女の口がぎこちなく動いた。

「つ、き、ひ、こ、さ、ん。
あ、り、が、と、う」

少女の体が輝きだした。
その様子を見て月彦は言った。

「なんだ、成仏するのか。
待てよ、その前に」

月彦は少女を引き寄せた。
そして、唇を重ねた。

少女は驚いて離れた。
月彦は手をひらひらさせて言った。

「あの世で使わない力をもらったんだよ。
本当は戦ってる間に全部吸い尽くす予定だったんだけどな」

少女は突然のことに混乱している様子だった。
月彦は構わず、静かに続けた。

「もともと、オレと妖怪は別々の存在だったんだ。
でもどっちも死にかけて、仕方ないからつないだ。
力を集めればオレの中のこいつを分離できる。
そうすれば」

言い終わる前に、少女は天に昇った。
月彦はしたたかに、最後の言葉を言った。

「家族を殺したこいつを殺せる」

辺りは静かになった。
月彦は夜空の月を見上げた。
それから笑って、辺りに呼びかけた。

「てめえら今から、巻き添え食らって死ぬんだぜ」

十以上の影が、ぐるりと月彦の周りを囲んでにじり寄った。
月彦の体から、紫の光がほとばしった。

水面の月が、ゆらりとゆれた。

拍手[0回]

フリーエリア

カレンダー
05 2020/06 07
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
キッカー
年齢:
32
HP:
性別:
男性
誕生日:
1988/04/09
バーコード
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]