キッカーの不定期更新日記
(四季来々トップへはカレンダー下のリンクから戻れます)
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
ルナは声を発することができなかった。
また文字を読み書きすることもできなかった。
結果として、二人は言葉によって意思を伝え合うことが不可能だった。
シュガーは肩を落とした。
ルナはしばらくシュガーを見つめて、それから木箱の方へ向かった。
ルナは木箱のひとつを開けて、そこからリンゴを取り出した。
そのリンゴを、シュガーのもとへ持っていって差し出した。
シュガーはリンゴを受け取った。
そうしてから、力なく首を振った。
シュガーの口は、物を食べることもできなかった。
ルナは首をかしげると、シュガーの手からリンゴを取り上げた。
それをひと口かじってよくかむと、ルナはくちびるをシュガーの口に押し当てた。
かみ砕かれたリンゴは、シュガーの口を汚しただけだった。
ルナはシュガーの口を指でなぞった。
それから一度シュガーから離れて、窓の右下から突き出た蛇口に手を置いた。
蛇口をひねると、ぬるい水が流れ出た。
ルナはそれを手にくんで、シュガーの口をすすいだ。
シュガーの目は、黒い石がはまっているにすぎなかった。
それでもルナは、震えるシュガーの目の下を何度もぬぐった。
蛇口から流れた水は、板目にそって木箱のすき間をぬっていった。
PR